映画 羊の木
鑑賞前、画像からのイメージは、激しく、ドラマティックで非日常を描いているように思えました。
鑑賞後は、なんと淡々とした地方風景を描いた映画なのだろうと呆気にとられたといいましょうか・・・。
消化しきれないで映画館を後にする方も多かったような気がします。
好き嫌いが、はっきり分かれると言ってしまうと鑑賞者の救いになるのかもしれません。
お金を支払い、ふかふかの心地よい席を確保して2時間暗闇で映画に集中する。
財産を削って選んだ映画として、どれくらいの価値がある映画なのか、満点か赤点なのか、評価が難しい映画です。
暴力を謳うわりに残虐シーンはありません。全体的には冷たく暗い雰囲気の漁村が舞台です。地方都市出身者にはピンとくる世界観だと思います。自分の地元もこんな感じという声が聞こえてきました。
カップルや夫婦で見た後、その辺も含めて解釈を語れる映画でもあります。
残虐シーンもありません。一人で見ると寒い時期なので、どんよりするでしょう。
(個人的な感想と解釈)
タイトルの「羊の木」を頼りにするしかありません。
ヨーロッパでは、「東方には羊の姿をした果実をつける木がある」と語られていたそうです。実際、そんな木はありませんが、イメージは立派な大きな木の枝先に羊がぶら下がっている絵となります。
しかし、なぜそのような言い伝えや想像が語られたのでしょう。
未知のものを想像する時、得体の知れないもの、空恐ろしい世界が頭に浮かぶのかもしれません。
物語の舞台は、刑期を終えた元囚人を受け入れる小さな漁村です。
架空の街ですが、富山県魚津市をロケ地とし、魚深市と絶妙感をだしています。
堂々とHPで魚深市移住ガイドマップをさらし、富山県魚津市と関連させているところをみると町ぐるみの全面協力なことが伺えます。
富山には元受刑者を受け入れる街があり、そこはどんな街なのか。
を想像すると、こんな羊の木になるのかなと思いながら見ていました。
描かれる元受刑者たちは、さほど異形のものたちではありません。多少、短気なくらいです。それよりも、彼らの受け入れ担当となった職員―錦戸さんが演じる主人公―が恐ろしいくらい自然体でなんでも受け入れます。
まさに、羊の実がなる木そのものです。この人物が、元受刑者を自然体で受け入れることで、映画全体が普通の街を描いているヒューマンな感じを醸し出しています。
もう違和感でムズムズする映画です。
一例をあげると、床屋に勤めた元受刑者に自分の髭を剃らします。
彼は拒否することなく剃らせます。手元ブルブル震えても、出川哲郎さんくらいの「ちょっとちょっと」くらいの反応でさばいてしまいます。
錦戸さんという俳優さんでなければ成立しなかった映画です。
とにかく、「自分の未知なる世界、人との出会いや経験への恐怖は、受け入れると流れていくんです」とふわっと思いました。